こんにちは。善立寺副住職小路竜嗣(こうじりゅうじ)です。

お坊さんが聞いてみるインタビュー「echo」
今日は東京都五反田にあるfreee株式会社さん(以下、freee)に伺いました。

freee社外観

freeeとは

freeeは2012年に創業したクラウド型会計ソフト「会計freee」を開発・販売しているベンチャー企業です。なんと!中小企業向けのクラウド型会計ソフトでは国内シェアNo.1!

いまのところ、宗教法人は正式対応していない

ですが、残念なことにまだ宗教法人に正式対応した会計freeeは提供されていません。

そこで今回はいまの会計freeeは宗教法人でどこまで使えるのかについて伺いました。

関連ニュース

引用)freee とゆびすいは今回の提携を機に、約8,000ある学校法人や約18万ある宗教法人などその他の公益法人に対応した会計ソフトの提供も順次検討し、あらゆる事業を展開するスモールビジネスの業務効率化に尽力してまいります(引用ここまで)

https://corp.freee.co.jp/news/yubisui-freee-7752.html

お寺の経理問題

経理担当がいない

お寺も宗教法人である以上、日々の経理や所轄庁への収支決算書提出、寺院規模によっては税務申告を行なわなければなりません。住職+家族で運営する小規模寺院では、経理の専門家でもないお坊さんが電卓を使って四苦八苦しながら帳簿をつけているのが現状です。

もし、経理業務にかける時間と労力を削減できれば、多くのお寺さんが助かります。また、寺院の収支を可視化することで、経営の健全化や今後求められるコンプライアンスの向上にも役立ちます。

freee社内/自由な執務スペース

freeeで働きながら副業で公認会計士としても働く高木さんに聞いてみた

freee高木悟(以下、高木)

こんにちは。freeeの高木悟(たかぎさとる)と申します。

freeeの高木さん
ちなみに

高木さんは弁護士資格と並ぶ難関国家資格である公認会計士を大学在学中に取得された方。freeeの技術情報にも詳しいスーパーな会計士さんです。

会計freeeのセキュリティは大丈夫?

こうじ

“クラウド”というと、セキュリティに不安があるという方もいると思いますが、まず会計freeeのセキュリティについて教えてください。

freee高木悟(以下、高木)

はい。お金という重要なデータをお預かりする以上、ご心配されるのは当然です。

弊社は銀行水準のセキュリティを確保しております。ネットワーク上のデータは256bitの暗号化通信を用いてやりとりされています。

銀行とデータをやりとりする上で、弊社も銀行からも非常に高いセキュリティを求められており、それらを全てクリアした上で皆さまのデータをお預かりしておりますので、ご安心ください。

また、社内のセキュリティ対策に加え、社外の組織と協力して常にセキュリティを強化しております。

データは消えない?

こうじ

クラウド上のデータが消えてしまうことは考えられますか?

freee高木悟(以下、高木)

freeeはAmazon Web Service(AWS)のクラウドサーバーを利用しています。

詳しい情報は社外秘のため、お伝えできませんが、AWSで提供されている方法でバックアップを行なっております。

もしご心配であれば、主要データをエクスポート(自分のPCにデータをダウンロード)する機能もございます。

AWSとは

Amazonが運営する世界最大のクラウドコンピューティングサービス多くの企業が導入しています。 AWS 導入事例: 全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」

会計freeeの使い方

◯PCやスマートフォンからいつでもどこでも使える

高木

会計freeeはインターネットブラウザを介して操作していただくサービスです。

ですので、WindowsやMacなどお使いのOSにかかわらず、どの端末からでもお使いいただけます。

また、iPhone、Androidのスマホ向けには専用アプリを使って、外出先からでも情報にアクセスできます。

銀行・クレジットカードのデータとリンクできる

高木

お使いの銀行口座・クレジットカードを会計freeeに登録していただくと、銀行の残高・入出金情報、クレジットカードの利用情報をfreee上で確認でき、内容から勘定科目・金額を自動で入力してくれます。

例えば、「中部電力」の口座振替なら「光熱費」、「NTT東日本」なら「通信費」と自動で入力されます。

なので、科目と金額に間違いがないかを目視で確認していただき、画面上で「登録」ボタンを押していただければ、経理作業は完了です。

会計freee操作画面・収益レポートの作成も簡単

こうじ

なるほど。データベースとリンクしているから、紙の領収書を見ながら手入力する必要がないんですね。勘定科目も判断して自動で振り分けてくれるなんて驚きました。

となると、固定費などは可能な限り口座振替とクレジットカード支払いに集約すれば、毎月決まった経理業務が楽になりそうですね。

高木

はい。できるかぎり口座振替とクレジットカードを使っていただければ、負担がぐっと減ります。

現金&領収書の場合は?

こうじ

でもお寺って現金支払いと紙の領収書のやりとりが多いんですよ。

そういった紙の領収書の場合はどのように入力すればよろしいでしょうか。手入力するしかないですか?

高木

紙の領収書については、スマホカメラやスキャナで領収書をスキャンすれば、データを取り込める機能があります。

スマホカメラから領収書を取り込める

領収書をスキャンすると、OCR(文字を自動で認識する機能)により、取引内容を推測します。例えば、タクシーの領収書をスキャンすると、自動で勘定科目を「旅費交通費」に推測し、金額も認識して入力します。

勘定科目と金額を自動で読み取り入力してくれます。修正も可能。

領収書のフォーマットによってはうまく読み取れないときもありますが、そういった場合は画像を見ながら、自分で勘定科目や金額を修正することができます。

一旦、領収書をスキャンしてしまえば、電車の待ち時間などの隙間時間にスマホから経理作業ができるようになりますよ。

どこでも経理作業ができる

こうじ

スマホカメラで撮るだけで科目の自動入力までしてくれるなんて!

経理というと、月末にドサっと領収書を広げ、帳簿とにらめっこしながら処理しなきゃいけないイメージでした。従来の会計ソフトでも結局は帳簿がパソコン上になっただけで、一つ一つ入力する必要がありましたよね。

でもクラウド型の会計freeeであれば、まずスマホのカメラでもいいから、領収書をスキャンしてしまう。で、その画像データをもとに、いつでもどこでも経理作業が行えると。

高木

そうなんです。PCからはもちろん、スマホでも使えるのがクラウドサービスのメリットですね。

領収書の原本は捨てていい?

こうじ

なら、スキャンしたレシートの原本は捨ててもいいですか?

高木

結論からいうと、領収書の原本は保管しておいてください。原本を捨ててもOKな「電子帳簿保存法」に従った方法もあるのですが、保存方法に厳密な指定があったりと、領収書全てを電子保存するのは現実的ではありません。なので、領収書の原本は保管をお願いします。

ただ、これまでのようにスクラップブックに日付順に貼り付けるなど、綺麗にまとめる必要はないです。例えば、1ヶ月毎に封筒にドサっと入れておく。くらいでもOKです。

なぜなら、会計freee上に会計収支・日付と領収書画像が保管されているので、必要なときにはいつでも閲覧が可能だからです。

原本が必要なのは税務調査で税務担当者から質問があったときのため。とお考えください。

公認会計士でもある高木さん

領収書のない取引は?

こうじ

公認会計士の方にそう言っていただけると心強いです!

他にも、お布施や御法礼など、領収書がない金銭のやりとりが多いのもお寺の特徴ですが、このようなものも会計freeeに入力することはできますか?

高木

はい。もちろんです。手入力になってしまいますが、収入・支出共に勘定科目を設定し、金額を打ち込んでいただくことが可能です。

立て替えた費用を給与に反映も

こうじ

お寺あるあるなんですが、「一旦、私費で立て替えておく」ということが多くて。

で、私もよくやってしまうのが、何ヶ月も経ってから立て替えたレシート見つけて「あ!請求するの忘れてた!」ということが。。。もうその月の会計締めてしまってるし、「すいません。これ。。。」と請求するのも非常に申し訳なくて。。。

高木

そういった場合、立て替え分を次の給与への上乗せという処理も可能です。

会計freeeは給与計算を行うソフト「人事労務freee」との連携もできます。領収書スキャン後に会計処理をする際、人事労務freeeと連携いただければ、翌月の給与にその金額が上乗せされます。

給与計算ソフト「人事労務freee」

こうじ

なるほど、立て替えたときはすぐにその領収書をスキャンして、会計freee上で立替経費精算を行う。つまり立替経費精算と会計処理が一度に行えるんですね。

これは請求する側も経理する側も楽ですね。

宗教法人への対応は?

今は未対応

こうじ

いまお話を伺ってみると、宗教法人でも問題なく使えるじゃないですか!

なぜ「宗教法人未対応」とされているんですか?

高木

いま説明させていただいた通り、日々の経理業務は問題なく使えるんですが、

宗教法人の決算書フォーマットに対応していなくて。。。

宗教法人の決算書フォーマットに対応してないんです。。。

経理と決算は異なる

こうじ

え??経理処理さえ問題なく行えれば、決算書もできるんじゃないですか?

高木

混同されがちなんですが、決算処理はまた別なんです。

今の会計freeeでは株式会社用の決算書には対応していますが、宗教法人用の決算書フォーマットには対応しておりません。

弊社のサービスは決算書に対応してこそだと考えているため、現段階では宗教法人には未対応とさせていただいております。

もしいま会計freeeをお使いになられるなら、決算書については別途Excel等で加工いただく必要があります。

日々の経理処理には使える。決算はExcel等で。

こうじ

なるほど。いまお寺でfreeeを使うなら

  • 日々の経理処理は行うことができる。
  • 決算書の作成はExcelなどで自身で行う必要がある

ということでしょうか。

高木

はい。もちろん、月ごとの会計情報をExcel型のファイル(csv)にエクスポートできます。ですので、それを基にすれば、 電卓を使った計算や大量の領収書から解放されるので、決算書作成もかなり楽になるとは思います。

これまで会計士さんに頼んでいた場合は?

こうじ

なるほど!それだけも助かるお寺がたくさんあると思います!

一方、お寺の中には、今すでに会計士さんや税理士さんにお願いしてるところもあります。これから会計freeeを導入したいと言った場合、今お付き合いしている会計・税理事務所さんは協力してくれるのでしょうか?

高木

そうですね。いきなり「今月から会計freee導入します!」

ではなく、「会計freeeというサービスがあって、3ヶ月くらい後に導入したい」などとご相談されてみてはいかがでしょうか?

freeeでは会計士、税理士さん向けの説明会も行なっているので、そちらに参加していただければ私たちのサービスについて理解していただけると思います。

会計freeeの導入は会計事務所側にもメリットが

会計ソフトというと「会計士さんの仕事を奪う」と思われるのですが、実は会計士さんにとっても、 会計freeeを導入すれば、実際に訪問して帳簿を閲覧しなくても、会計情報を確認できる。というメリットというがあります。

また、収支の符合や計算に時間を割かれることなく、より専門的なアドバイスに注力できるので、現在では5800を超える事業所にfreee公認アドバイザーとしてご協力いただいております。

宗教法人に強い事務所の紹介も

こうじ

今は税理士さんに頼んでいないけど、会計freee導入を機に専門家のアドバイスがほしいという寺院もあると思いますが、そういった場合も対応していただけるんでしょうか?

高木

はい。freee認定アドバイザーの事務所をご紹介できます。宗教法人に強い税理士事務所の検索はもちろん、メール、チャットでの相談以外に実際の訪問も可能な税理事務所も多数ありますので、ご検討ください。

税理士検索freeeでは宗教法人に強い事務所も検索できます

こうじ

なんと!そんなこともできるんですね!

お話を伺う前は宗教法人への正式対応はまだとのことで、全く使えないものかと思っていました。が、伺ってみると、日々の経理業務については、十分使えることが分かり、とても参考になりました!

今日はありがとうございました。

高木

こちらこそ、ありがとうございました。

初歩的な質問にも丁寧に答えてくださった高木さん

本記事は広告記事ではなく、筆者の個人的なインタビューです。この記事に関して、freee株式会社からの利益供与は一切ございません。

この記事を書いた人

副住職こうじりゅうじ

浄土宗善立寺副住職
大正大学地域構想研究所客員研究員
元エンジニアで寺院のデジタル化を推進する
寺院ITアドバイザーとしても活動している
ScanSnapアンバサダー/認定DXアドバイザースペシャリスト