仏教と音読みの歴史

 京都の浄土宗大本山「清浄華院」は「ショウジョウケイン」と読みます。
同様に、善立寺は「ゼンリツジ」ではなく「ゼンリュウジ」と読みます。
私も出家した当初は、なんて読むのか分からず、困ったことが多々ありました。

仏教用語は変わった読み方をすることが多いです。
それには、仏教が伝わった時代が深く関係しています。

中国から漢字と読みを輸入

 現在、漢字の音読みには大きく分けて「呉音」・「漢音」・「唐音」の3種類があります。
これらはそれぞれ、日本に伝わった時代が異なります。

仏教経典は6世紀頃、中国から伝わりましたが、当時、中国には「呉音」しかありませんでした。

そのため、日本に伝わった経典や仏教用語も当然、呉音を用いて発音されました。

ところが、7世紀になると、当時の中国王朝は旧王朝の読み「呉音」を廃止し、代わりに「漢音」を導入しました。遣隋使が中国に渡った際、日本で使われていた「呉音」が通じず、大変驚いたそうです。

遣唐使船 By ぱちょぴ[CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

帰国した遣隋使は、これは大変なことだと、朝廷に最新の言語として、「漢音」を紹介し、朝廷も最新の言語「漢音」の普及に尽力しました。

桓武天皇、漢音普及に尽力も…

桓武天皇像(延暦寺蔵), via Wikimedia Commons, public domain

その中でも桓武天皇は漢音普及のために尽力されました。

普及のため、呉音で経典を読んでいた僧侶たちに対して「経典は漢音を読む事」との勅令も出しました。
しかし、何百年も続いてきた経典の読みを変えることに僧侶たちは強く反発し、経典は呉音のまま読まれ続けました。

結果として、経典は現在も「呉音」のまま読まれています。
また、一般社会でも既に広く使われていた「呉音」が廃れることはありませんでした。

更にその後、中国に留学した禅僧たちにより「清」を「シン」と呼ぶような「唐音」も輸入されました。
そして、「呉音」「漢音」「唐音」が混在する複雑な読み体系が生まれました。

中国より複雑な日本の読み体系

この結果、日本では呉音・漢音・唐音という3種類の読みを併用するという、複雑な読み体系になりました。

例えば、『清』は
呉音では『ショウ』
漢音では『セイ』
唐音では『シン』と読みます。

一方、現在、中国では古い読み方は失われ、
『チン』という読みしかありません。

このように、日本語の音読みの歴史には仏教が深く関わってきました。
普段何気なく使っている言葉にも、意外な歴史が隠されていますね。

漢字読み
上人しょうにん
光明こうみょう
末期まつご
礼拝らいはい
清浄華院しょうじょうけいん
善立寺ぜんりゅうじ
修正会しゅしょうえ
建立こんりゅう
荘厳しょうごん
発願ほつがん
仏教用語と読み

この記事を書いた人

副住職

副住職

浄土宗善立寺副住職
元エンジニアで寺院のデジタル化を推進する
寺院デジタル化エバンジェリストとして活動している
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