お寺の楽器
法要では様々な楽器を使い分けます。その歴史は古く、お釈迦様がいらっしゃった2500年前から人を集める合図として打ち鳴らされていました。その後も集合の合図や、声を合わせる拍子として使われるようになり、浄土宗の法要では、一人で5種類の楽器を使い分けることもあります。今回はそんなお寺の楽器についてまとめました。
お坊さんは楽器とは呼ばず、犍稚(かんち)と呼びます。
木魚/もくぎょ
お寺といったら木魚!というイメージですが、日本で使われるようになったのは江戸時代から。仏教2500年の歴史から見ると、かなり新しい楽器なんです!新しいがゆえ、宗派によっては全く使わないこともあったり。浄土宗の法要では、参列者全員に木魚をお渡しし、一緒にポクポクしながら、「なーむあーみだーぶ」とお念仏することもあります。
木魚とインゲン豆を広めた人は同じ
木魚は江戸時代、黄檗宗(おうばくしゅう)を開いた隠元禅師(いんげんぜんじ)が中国から日本に持ち帰ったのを機に広まりました。隠元禅師はその名の通り、インゲン豆も日本に持ち込み、広めました。
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魚版/ぎょばん
木魚の原型
魚版(ぎょばん)はその名の通り魚型の板です。本堂の外などに吊り下げられ、起床時や法要が始まる合図として、現在でも用いられています。
なぜ木魚も魚板も魚なの?
その昔、魚にはまぶたが無いため、眠らないと考えられていました。ゆえに、魚を勤勉・精進の象徴として用いるようになりました。口に加えた玉は煩悩を表し、背を叩くことで煩悩を吐き出させるという意味があります。
第二次大戦後、木魚は打楽器として西洋音楽にも取り入れられました。
はじめにジャズドラマーが使い始め、その後、オーケストラでや吹奏楽でも用いられるようになりました。“木魚”と呼ばずに、「テンプルブロック」、「ウッドブロック」と呼ばれています。
伏鉦/ふせがね
元々は吊り下げて使う鉦を床に伏せて使ったことから「ふせがね」と呼ばれるようになりました。木魚が誕生する前から広く使われており、現在でもお念仏を唱えるときは伏鉦を使います。また、吊り下げていた頃の名残で、いまも2箇所に穴が空いています。
撞木(しゅもく)
伏鉦を打つ棒を撞木(しゅもく)と呼びます。頭の形がそっくりなシュモクザメの名前の由来にもなりました。本当にそっくりですね!
鉦を下げた念仏聖 空也上人
平安時代の念仏聖、空也(くうや)上人が胸に下げているのが鉦です。上人はこの鉦を打ちながら諸国を行脚されました。
鏧(きん)
法要のメトロノーム
鏧はメトロノームのような役割があり、打つ間隔により、お経の読むスピードを整え、大きな法要でも声が揃うようにします。また、音叉のように音程を確認することにも使われます。中には音階が綿密に調整されている鏧もあります。
本堂にあるよな大きいサイズの鏧を大鏧(だいきん)、小さいサイズの鏧を小鏧(しょうきん)と呼びます。皆さまのご自宅にあるお仏壇にある鐘も小鏧(しょうきん)の仲間です。
他宗では鏧(きん)ではなく鏧子(けいす)と呼ぶことも。
声を合わせ、心を合わす
浄土宗のお念仏では、参拝者全員で「南無阿弥陀仏」と何度もお唱えします。最初は声も小さく、バラバラです。しかし、木魚の音に合わせ、声が揃ってくると、だんだんと心も揃い、会場全体が一つになる瞬間が、とても心地のよく、ありがたい瞬間になります。
今度、法要に参加された際は、そんな法要の”音”にも注目していただけたらありがたいです。
筑摩観音霊場の諸大徳とは青年会でご一緒することが多く、西福寺さまや桃昌寺さま、そして今年晋山を迎えられる牛伏寺など、同世代が住職として多数参加されていて、時の流れを感じました。