臨床宗教師、それは最前線のお坊さん

こんにちは。善立寺副住職、小路竜嗣です。
今回のインタビューは前回に引き続き、東京都墨田区龍興院副住職、大島慎也上人です。
これまで宗教者が公立病院内で宗教活動を行うことは禁止されてきました。
それが今、「臨床宗教師」という活動から変わろうとしています。
今回はそんな新しい活動「臨床宗教師」について大島上人に伺います。

↓前回の記事はこちら

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病院ではタブー視される僧侶

善立寺副住職小路(以下、小路)

病院って、私たち僧侶をタブー視する場所ですよね。
僧服行くと嫌がられる場所のような。
率直に言って、病院が協力していただけたことに驚きました。
龍興院副住職大島慎也上人(以下大島)

そうですね。病院+お坊さん、という組み合わせはタブー視されますね。
私も大学病院に勤めている時、腕に数珠を付けていただけで上司に「外しなさい」と怒られました。
その一方で、キリスト教系病院ではチャプレン(院内牧師)が長年活動されています。
この臨床宗教師は日本型チャプレンを創立しようと、東北大学と各病院のご協力により行っています。
私は現在、地方のがんセンターで臨床宗教師として活動しています。

[box class=”glay_box” title=”チャプレン”]チャプレンあるいはチャップレン(英: chaplain)は、教会・寺院に属さずに施設や組織で働く聖職者(牧師、神父、司祭、僧侶など)wikipediaより引用[/box]

臨床宗教師とは

小路

臨床宗教師とはどんな活動をされているのですか。
大島

まず結論から言うと、具体的な布教活動は行いません。
患者さんから「あなたの宗派はどのような教えですか」と聞かれたら、浄土宗の教えは説明しますが、浄土宗を勧めることはありません。
日本人が持つ漠然とした死生観や共通認識として「あの世」の話をすることはあります。
患者さんご自身のお話を聞いたり、私たち宗教者と対話をすることで、心を癒やし、安心していただけるよう活動をしています。
小路

なるほど。院内で生死について話し合えることそのものが革新的ですね。
私たちって、檀家さんがご自宅にいる頃は一緒に手を合わせたり、念仏を唱えることができます。
しかし、一旦、入院されると僧侶としてお会いすることが難しくなります。
特に院内では生死について話すこと自体がはばかられ、
本当に心の支えが必要なときに寄り添えないことに私も心苦しい想いをしています。
お話を伺うと、臨床宗教師がそんな現状を打破するきっかけになってくれると感じます。

死は敗北なのか

大島

私は医師であり、僧侶であるのでよく思うことなのですが、
生きるときの道標がお医者さん。
死ぬときの道標がお坊さんなのではと思っています。
今の医学は、なんとか生きながえられるようにします。
お医者さんは「病気に勝ちましょう」と言います。
でも私たちは最後には必ず死にます。
生死を勝ち負けで考えると、私たちはいつまでも安心を得ることはできません。

死の救済

大島

死ぬことは本能的に怖いことです。
末期ガンの患者さんのお話を聞くと、皆さん死が怖いとおっしゃいます。
眠れなくなったり、「私が死んだらお父さんはどうするのか」と家族が心配になったり。
すると自然とあの世の話が出てくる。
”死んだ奥さんが枕元に立っていた。”
“夢で死んだあとの世界をみました。”
というお話をよくされます。
そうすると、みなさんなんとなく安心されるんです。
死んで終わり、無になります。
ではなく、死んだら次の世界があるということに私たちは安心する。
亡くなっても会えるんだ!という希望が見えてくる。
それが医学では解決できないことであり、私たち宗教者にしかできないことだと思います。
勝ち負けという価値観ではなく、死を受け入れて、幸せになる。
そういうところに宗教の力があるんじゃないかなと感じます。

だから今伝えたい!

大島

だからこそ、生きているうちにお伝えしたい!といつも思っています。
お釈迦様は生きている私たちを救うために仏教を遺してくれたんですから。
仏教=お葬式というイメージ以上に、これから仏教は様々な場面にアプローチできると思います。
そして私たち僧侶ももっと活動の場が広がると思います。

熱意と優しさを持ってお話してくれた大島上人

[voice icon=”https://zenryuji-jodo.com/wp-content/uploads/2018/02/12885826_1064783796928920_1010046457563006184_o.png” name=”ライター小路” type=”l”]歯科医であり、僧侶であり、臨床宗教師でもある大島上人。熱意と優しさをもって仏教を伝えるお姿に同期ながら感銘を受けました。これからのご活動もチェックしていきたいです!![/voice]

浄土宗常在山龍興院
〒130-0003
東京都墨田区横河1-3-18
WEBサイト:http://ryukoin.jp/

この記事を書いた人

副住職こうじりゅうじ

浄土宗善立寺副住職
大正大学地域構想研究所客員研究員
元エンジニアで寺院のデジタル化を推進する
寺院ITアドバイザーとしても活動している
ScanSnapアンバサダー/認定DXアドバイザースペシャリスト